婦人科診療について
婦人科診療項目と検査・治療
月経異常・不正性器出血
月経不順、月経痛、過多月経、過長月経、月経前症候群などの月経に関連した症状で、日常生活に支障を来す場合は、受診してください。年齢や症状を考慮し、必要に応じて検査を行います。不正性器出血は排卵の周期による異常ではない出血、排卵周期の乱れからおきる出血、病気による出血、膣炎や感染症による出血、妊娠による出血など、原因は多彩です。病気ではなくても、お困りの症状に関する改善策や薬を処方することが可能です。
不妊症
不妊症とは、避妊せずに性行為を続けているのにもかかわらず、一定期間妊娠しないものをいいます。一定期間とは1年というのが一般的とされています。基礎体温測定・内分泌検査(血液検査)・おりもの検査・経膣エコー検査・精液検査・子宮卵管造影検査の後、排卵誘発法・人工授精などの一般不妊治療を行います。基礎体温を測定している方は、基礎体温表を持参ください。子宮卵管造影検査や体外受精は、他院へ紹介させていただきます。
更年期障害・GMS(閉経関連尿路性器症候群)
更年期とは、閉経の前後5年間ずつの計10年間をさします。更年期に現れる多種多様な症状を更年期症状といいます。更年期症状には、のぼせ・ほてり・発汗・倦怠感・めまい・動悸・頭痛・肩こり・不眠・不安感・イライラ感・抑うつ気分などがあります。これらは卵巣機能が低下することでおこる症状で、血液検査で診断することが可能です。GMSとは、閉経前後から外陰部を中心としたさまざまな症状が出現する状態をいいます。外陰膣萎縮の症状や性交痛などの性機能症状、頻尿や残尿感などの排尿症状があります。当院では漢方や抗うつ剤などの薬物療法、ホルモン治療、外陰部膣レーザー治療などを行っています。
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骨塩減少・骨粗鬆症
骨粗鬆症とは、骨量(骨塩量)が減少し、骨組織の骨密度が低下することによって、骨がもろくなり、骨が折れやすくなる状態をいいます。骨量は骨に含まれるカルシウムやマグネシウムなどのミネラルの量で、骨密度は単位面積当たりの骨量のことです。骨は、骨芽細胞が新しい骨を作り出す「骨形成」と、破骨細胞が古い骨を吸収する「骨吸収」がバランスよくおこなわれることで、強く健康な状態を保っています。骨量は幼少期から20~30歳代をピークに増え続けますが、エストロゲンという女性ホルモンの減少とともに減ってきて、閉経時期である50歳前後から急激に減少します。エストロゲンは破骨細胞による「骨吸収」をおさえる働きをしています。エストロゲンの量が急激に減少する閉経期に「骨吸収」が「骨形成」を上回り、骨密度が低下し骨粗鬆症になりやすくなるのです。また、家族に骨粗鬆症にかかった人がいるなどの遺伝的な要因、栄養の不足した極端なダイエット、運動不足、喫煙、特定の病気や薬物なども原因に挙げられます。
当院ではDEXA法によるX線骨密度測定装置を用いて、腰椎や大腿骨近位部の骨量を測定します。骨密度測定には複数の方法がありますが、この方法が最も信頼度が高いとされています。X線量はきわめて少なく、痛みを伴わず、息止めも必要ありません。40~50歳ころに一度は検査を受け、生活習慣の改善などによって骨量をできるだけ維持していくことが、骨粗鬆症を予防することになります。
子宮脱、頻尿・尿漏れ
骨盤底筋とは骨盤の底にある筋肉の総称で、恥骨・尾骨・坐骨にハンモックのようについています。骨盤底筋は、骨盤内にある膀胱や直腸や子宮を正しい位置に保ったり、肛門や尿道を緊張・弛緩させ、排泄をコントロールする役割をしています。加齢や妊娠・出産、肥満により骨盤底筋が引き伸ばされて、骨盤底筋が緩んでくると、骨盤内臓が下がったり、頻尿や尿漏れや便秘をおこします。さらに緩むと、膣から子宮・膣壁が脱出する骨盤臓器脱がおきることがあります。骨盤底筋トレーニング指導や、投薬・ペッサリー治療、骨盤底筋をトレーニングできる椅子型機器(アンチェアー)を導入しています。
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膣炎・性感染症
おりものの臭いや量、外陰部の痒み、外陰部のできもの、喉の症状などの症状があれば、症状に応じておりものの検査や血液検査、咽頭検査(うがい液)を行います。対象疾患は細菌性膣炎、カンジダ膣炎、細菌性膣症、クラミジア感染症、淋病、外陰ヘルペス、尖圭コンジローマ、トリコモナス、マイコプラズマ、梅毒、B型肝炎、C型肝炎、HIVです。
良性腫瘍性疾患
子宮筋腫
子宮の筋層内に発生する良性腫瘍で、30歳以上の女性の20~30%にみられ、婦人疾患で最も好発する病気です。発生している場所により、過多月経や月経痛増悪、さらに大きくなると下腹部にしこりを感じる場合もあります。
卵巣のう腫
卵巣に液体が入った袋状のしこりを卵巣のう腫といいます。卵巣のう腫の症状はお腹が張る感じや、下腹部痛などですが、小さいうちは無症状で経過することが多く、かなり大きくなってから症状が出現します。(卵巣チョコレートのう腫は小さくても月経痛や下腹部痛の症状があります。)大きくなる途中でお腹の中でのう腫がねじれてしまうことを茎捻転といい、突然強い痛みがおきます。
子宮内膜症
子宮内膜症とは、子宮内膜の組織が子宮外に発生し増殖する病気です。子宮以外の場所で月経毎に出血がおき、炎症や癒着をおこすことで、月経痛などの痛みがおきます。また増殖を繰り返すため、腹膜や臓器の表面に血が入った袋状の腫れができます。それが卵巣に発生すると、卵巣表面で月経毎に出血がたまり、卵巣チョコレートのう腫となります。子宮内膜症は不妊症の原因になることもあります。
子宮腺筋症
子宮内膜に似た組織が子宮筋層内にでき、増殖する病気を子宮腺筋症といいます。子宮筋層内で増殖を繰り返すため、子宮筋層が厚くなり、子宮が大きくなり月経痛や過多月経がおきます。
子宮頸管ポリープ・子宮内膜ポリープ
子宮の入り口部分にできたものを子宮頸管ポリープ、子宮の奥の方にできたものを子宮内膜ポリープといいます。不正出血をおこす病気で、子宮内膜ポリープは不妊症の原因になることもあります。
腫瘍性疾患は、経膣エコー検査・経腹エコー検査、必要に応じて血液検査やMRI撮影を行い、診断します。当院では薬物治療(ピル、ディナゲスト、偽閉経療法などのホルモン治療やミレーナ)を行っていますが、手術を検討する場合は、総合病院へ紹介させていただきます。子宮頸管ポリープは当院で切除可能です。
子宮頸部異形成・子宮頸がん
子宮頸がんは子宮の入り口(子宮頸部)にできる癌です。30歳代前半から罹患率・死亡率ともに上昇します。子宮頸がんのほとんどは、ヒトパピローマウイルスというウイルスが、性交渉により子宮頸部に感染することが原因であるといわれています。ほとんどは免疫機能で自然に排除されますが、一部が持続感染し、子宮頸部異形成という状態になります。子宮頸部異形成は、進行度から軽度異形成、中程度異形成、高度異形成にわけられます。そして一部が子宮頸がんにすすむと考えられています。コルポスコピーという子宮の入り口を拡大して観察する機械を用いて、組織を採取し診断します。高度異形成や子宮頸がんは治療が必要なため、総合病院へ紹介させていただきます。
子宮内膜増殖症・子宮体がん
子宮体がんは子宮の奥で月経を起こす内膜にできる癌で、多くの子宮体がんの発生には女性ホルモンである卵胞ホルモン(エストロゲン)が関与しています。エストロゲンには、子宮内膜の発育を促す作用があり、エストロゲン値が高い場合は、子宮内膜異型増殖症という前段階を経て、子宮体がんが発生します。一方、前段階がなくエストロゲンに依存しない子宮体がんもあります。経膣エコー検査や子宮内膜細胞診・子宮内膜組織診で診断します。
卵巣がん
日本では卵巣がんを発症する女性は40歳代から増え始め、50~60歳代でピークを迎えますが、10~20歳代の女性に多いがんもあります。卵巣がんは罹患数・死亡数ともに近年増加しており、女性生殖器にできる女性特有のがんの15%ですが、死亡率は最も高いとされています。多くの卵巣がんは前がん状態を経過せずに急激に発生しますが、一部の卵巣がんは、良性や境界悪性腫瘍を経過して、ゆっくりがん化します。また子宮内膜症が原因で発症する卵巣チョコレートのう腫ががん化して、発生する場合もあります。経膣エコー検査・MRI撮影・血液検査で診断します。
乳房痛、乳腺腫瘤、乳汁分泌
触診や乳腺超音波検査をおこない、必要に応じて乳腺外科へ紹介させていただきます。超音波検査は乳房の表面にゼリーを塗布し機械をあて、映し出された画像で病変の有無を調べる、痛みを伴わない検査です。放射線を使わないので、妊娠中の方もうけることができます。当院ではマンモグラフィ検査は行っておりません。
産科診療について
妊婦健診
当院では分娩は取り扱っていませんが、セミオープンシステムでの妊婦健診や、里帰りまでの妊婦健診を行っております。セミオープンシステムとは妊婦健診は近くの診療所で受け、妊娠34週から36週ころに出産施設で妊婦健診・分娩をするシステムです。妊娠34週ごろ(出産施設や妊娠経過により異なります)まで妊婦健診を行い、分娩はセミオープンシステムを利用し、ご希望の総合病院に紹介します。詳しくは、わかやまお産ネットワークのホームページをご覧ください。
妊婦健診の流れ
8~10週
出産予定日を決め、妊娠初期検査として子宮頸がん検査・血液検査(血液型・感染症・貧血・血糖・風疹抗体・HIV抗体)をします
12~24週
4週おきに妊婦健診があります。セミオープンシステムの場合は、出産施設で2回目の妊婦健診をうけます。
24週
妊婦健診・血液検査(血糖・貧血・HTLV-1抗体)・帯下検査(クラミジア検査)があります。
24週~30週
2週おきに妊婦健診があります。
30週
妊婦健診・血液検査(貧血)があります。
32週
当院での最終の妊婦健診です。出産施設への紹介状を発行します。
妊婦健診の項目:腹囲・子宮底・体重血圧測定、尿検査、腹部超音波検査、内診、経膣超音波検査
(妊娠12週までは腹部超音波検査はありません。)
自治体で発行される受診票(控除券)が全て使用できる健診は無料ですが、一部使用する健診は3360円の自己負担金が発生します。